【11】大人になりたくなかった話

シリーズ「なぜ私は、働く8時間にこだわるのか」第1話
子どもの頃、私は大人になりたくありませんでした。
かっこいい話ではありません。将来の夢がなかった、という話でもありません。もっと単純で、もっと切実な理由です。私の目に映る「働く大人」が、ちっとも幸せそうに見えなかったからです。
我が家の父は、ほぼ毎晩、酔って帰ってくる人でした。携帯電話などない時代です。何時に帰るかは誰にも分かりません。母は着替えもせずに布団に横になり、父の帰りを待ちます。そして帰ってきた父は、その日にあった面白くないことを、寝ていた母を起こして延々と聞かせるのです。
妹と弟は眠っています。でも私だけは、その声で目が覚めてしまう。父の怒鳴る声。布団の中でその声を聞きながら、子ども心にはっきり思っていました。
——大人って、働くって、あんなに嫌なものなのか。だったら、大人なんかになりたくない。
会社勤めというのは、あんなふうに人を疲れさせ、その疲れを一番大切なはずの家族にぶつけさせるものなのか。そんな世界に行きたいわけがない。私にとって「働く」は、長いあいだ、憧れの対義語でした。
それでも人は、大人になってしまう
なりたくなくても人は大人になります。私も就職し、転職し、家族を持ち、気づけば管理職になっていました。そして40歳のとき、恐ろしいことに気づきます。
部下に「意見を言ってみろ」と言わせておいて、「そんなんじゃダメだ」と潰す。言ったことをやらないと「なんでやらないんだ」と詰める。——私は、あの頃の父にそっくりの上司になっていたのです。しかも本人は、それが正義だと思って一生懸命やっている。当然、結果は全く出ませんでした。このあたりの話は、また別の回に書きます。今日お伝えしたいのは、一つだけです。
人材育成のお仕事をされているあなたへ
御社の社員の方々は、今日、家に帰って、どんな顔をしているでしょうか。
働く8時間が良いものであれば、プライベートの8時間も、眠る8時間も、良いものになります。逆もまた然りです。仕事の8時間で摩耗した人は、その摩耗を必ずどこかへ持ち帰ります。私の父がそうだったように。そして、その家庭で育つ子どもが「大人になりたくない」と思うところまで、それは続いていきます。
人材育成とは、研修で知識やスキルを配ることではなく、この8時間の質を変える仕事だと私は考えています。なぜそう考えるに至ったのか——この続きは、次回「勉強しなきゃいけない理由がわからなかった話」で。
もし、貴社の「8時間」について話してみたいと思われたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。研修のご相談でなくても構いません。あなたのお話を聞かせてください。