【14】「部下に聞いたって、答えないよ」と言われた話

 シリーズ「なぜ私は、働く8時間にこだわるのか」第4話

私はかつて、自分のコーチング研修を、自分でやめたことがあります。

40歳で管理職になった私は、典型的な指示命令型でした。「意見を言ってみろ」と言わせておいて潰す。結果が出ない。困り果てて出会ったのがコーチングで、のめり込んで学び、やがて社内でコーチング研修を提供するようになりました。

あるとき、人事経由で受講生の声が届きます。

「コーチングなんかやったって無駄だよ。部下に聞いたって、あいつら答えないよ」

——どうなんですか、と問われて、私は答えられませんでした。「いや、そんなことないよ」以上の言葉が出てこなかった。それでこの研修を、やめました。

今なら、こう答えます

あれから7つの習慣に出会い、あり方というものを叩き込まれて、今なら明確に答えられます。

それは、部下が「答えられない」のですか。それとも「答えたくない」のですか。

今、管理職研修でこの話をすると、面白い反応が返ってきます。「答えられない、だと思う」と手を挙げる人と、「答えたくない、だと思う」と手を挙げる人、だいたい半々に分かれるのです。

もし答えたくないのだとしたら、当然です。下手なことを言えば「じゃあお前がやれ」と言われる。意見を言えば潰される。そういう上司に質問のスキルだけ与えても、部下は答えません。むしろ質問がうまくなるほど、部下は追い詰められます。

つまり、コーチングが無駄なのではない。コーチとしてのあり方ができていない人に、やり方だけを渡しても機能しない、ということなのです。かつて答えられなかった私は、やり方しか教えていませんでした。受講生の一言は、正しかったのです。

研修が「道具の配布会」になっていませんか

コーチング研修、1on1研修、傾聴研修。世の中には優れた「やり方」の研修があふれています。ただ、導入前に一つだけ確認してほしいのです。

その研修は、「何のために部下の話を聴くのか」から始まっているでしょうか。

部下を思い通りに動かすためにコーチングを学ぶ管理職は、確実に失敗します。部下が自ら考え行動できるようになるのをサポートする——その順番に立てて初めて、スキルは生きます。だから私の研修は、マインドとスキルの両方を必ずセットにしています。片方だけなら、やらないほうがましだと本気で思っているからです。

貴社で予定されている研修は、「道具の配布会」になっていないでしょうか。——そう一度、問い直してみませんか。もし少しでも引っかかるところがあれば、企画段階でのご相談も歓迎です。私自身が一度失敗している分野なので、ご遠慮なくどうぞ。